2004年01月05日

週刊プラネテス#12 「ささやかなる願い」

 今回この物語は、原作とストーリーラインこそ同じであるものの、物語の進め方はやや異なっています。つまりそれはフィーへのストレスへのかけ方であって、原作の方ではフィーにストレスがかかった結果彼女の行動にブーストが付くという展開であったのに対し、アニメ版はフィーにストレスを与え続けることこそが物語の目的であって、衛星はジャストミートを喰らわすまでのプロセスも永遠と煙草が吸えなかったことに対する恨み辛みを呟き続けるという「私怨」に満ちあふれた構成になっているという点です。つまり、中心点が「ジャストミート!」にある原作と、「フィーの一番長い日」になっているアニメ版と、変化を加えているわけです。

 だから、フィーがどんどん追い込まれていくプロセスが楽しく、宇宙防衛戦線に散々邪魔され挙げ句ハチマキとタナベとの痴話喧嘩の末にスモーカーズ・シートが破壊されるというオチ付きだったのも、構成として高評価。また、原作ではトイボックスのクルーは月を拠点としているのに対し、アニメ版ではISPV-7がそれであるわけで、この月とセブンとの距離感を使ったフィーのやられっぷりには爆笑しました。なんだかこう、はかた号に二回乗せられた大泉洋のようだった。定時よりも早くセブンに到着しちゃってるし。

 ラストのチェイスシーンも、だから焦点は「どこまで行っても私怨」が強調されていて、吐く台詞はもうそれだけ。セブンのコントロールルームが大混乱に陥ってる中で、ただただ「ざけんな! もうすぐスモーカーズシートが直るって云うのに、きさまら!」だの「半径四百キロで煙草を吸えるのはあそこだけなんだよ!」だの(一方でコントロールルームでは「ステーション内の酸素分圧はレベルレッド」だの「正体不明機、乱数加速で捕らえ切れません!」だの「ミサイルはどうした!」だの、やたら緊迫してる)頭の中は煙草絡みのことしかないフィー姉さん。いやぁ、笑った笑った。

 原作の方は、このチェイスシーンのコントロールルームが実はコメディタッチというか、フィーの突撃があまりのことなのでもはや為す術なしという混乱状況を描いているだけなのですが、アニメ版はこの段階で既にハキムが登場している以上、そういうわけにもいかないはずです。そう、ハキムはもう登場しているのです。この物語を、「ただフィーの物語」として終えるわけにはいかないし、各話が密接に関係しているこのプラネテスという物語に於いて、やはりただ一つの物語として静止させておくことはできません。それになんというか、あのシーンは僕は、ハキムばっか気になってしまいました。「トイボックスか!」の演技最高。

 恋愛もようですが、ある意味でチェンシンが壊れてまいりました。彼は台湾人ですけど、中華系の人って妙に写真を見せびらかすイメージがあって、タナベとのデートの写真をみんなに見せているシーンは、なんとなく笑ってしまいました、胸に手を当ててたりすると更に素晴らしいのですが(「HR」のホイさんみたいに)。またリュシーもいいじゃないですか、わりと「お約束とステップ」が要求される恋愛に対して、リュシーのような破壊的なキャラは楽しい。しかし、セブンの一般ブロックって、ブティックなんてのもあるんですな。なんかこう一瞬地球に帰ったのかとすら思ってしまいました。

 やはり、総てアニメ版は、改めて「考えて作ってるなぁ」と、当たり前のことを再確認してしまったのが実は今回です。コリン、シアの父&母、ニンジャ、ノノなどの懐かしい人々をさらりと出して「今」を描くなどの小手先のサービスをしてくれるのも嬉しく、しかもニンジャ達はレアメタルの採掘をしているのに対してシア父&母は地球のプランテーションのような場所で働いているなど、ちゃんとあの物語からつなげているという所も「やるな大河内」という感じです。

 今週のエーデルさんは、ニュータイプであると共に、妙にタオルが似合う女だということが判明。

Posted by mondo at 2004年01月05日 21:21 | TrackBack
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